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親が軛となる日~ビジネスケアラーと介護離職問題の元凶~

第二次安倍政権が 2015 年の秋に打ち出した国家戦略『新・三本の矢』。ここで掲げられた一大目標が、『介護離職ゼロ社会の実現』です。あれから干支がひと回りしようという現時点で、ビジネスケアラーは推定 300 数十万人に膨れ上がり、介護離職者数も 10 年連続で 10 万人超えと、いっこうに改善の兆しは見えません。もう少しピンとくるような表現をすると、日本全体の就業人口の 17 人にひとりがビジネスケアラーであり、5 分にひとりのスピードで、現役ビジネスパーソンが自身のキャリアを断念し家族介護にヌマっていく…。それが”今”という時代なのです。 いわゆる 2040 年問題。それは、団塊ジュニア世代 800 万人がすべて高齢者(65 歳以上)となり、かつ彼らの親の多くがまだ生きている時代です。健康寿命がすでに尽きて、平均寿命や死亡最頻年齢に至るまでの要介護状態や認知症状態で、です。人間だれしもひとりでは死んでいけないし、親子の縁は死んでも切れない以上、現役世代であるこどもたちの仕事と家庭と人生に影響を及ぼさないわけもありません。その最たる例が介護離職であり、それは多くの場合、経済破綻や家庭崩壊や介護殺人の危機を孕んでいます。 ここで私は、2040 年問題を飯の種にしている有識者と言われる人たちが、なぜかストレートに語ることのない介護離職問題の本質もしくは元凶について端的明瞭に述べたいと思います。結論から言えば、この10 数年以上もの長きにわたり、ビジネスケアラーと介護離職者が減らない原因は、彼らの親の存在です。誤解されるといけないので正確に言うと、老い先にそなえ ない親たちです。これを私は”老親問題”、そんな老親がはびこっている状況を”親が軛となる日"…と呼んでいます。極端な例を持ち出せば、彼らは無計画にこどもを(多くの場合)複数つくり、老い先とエンディングに対しキチンとしたそなえを怠り、ただ漫然と齢を重ねる一方、そのツケをこどもたちに背負わせているのです。 さらに言えば、老親世代はもとより、40 代半ば以上のこどもたちもまた、そなえていないのが実態です。自分の親を反面教師とすべきなのですが、日本人の傾向として、ビジネスに関しては PDCA の業務サイクルをしっかりとまわしてプロジェクト管理することがカラダに染みついているのですが、ことプライベートとなると、不思議と無頓着で無計画なのです。それを示すデータが、欧米人は 75 歳以降エンディングまでの間、資産総額がどんどん減っていくのに対し、日本人だけがエンディングまで資産総額が右肩上がりで増え続ける…というものです。つまり、欧米人は、75 歳を過ぎると自身の老い先のため(介護や医療のため)に自らの資産を充当しつつ、こどもたちに資産を継承していくのです。厳密に言えば、日本特有の税制(贈与・相続の課税の高さ)が影響しているとも言えますが、ちなみに、霞が関や永田町の人々は、節税に配慮しながら、ちゃんと資産べらしを実践しています。 ということで、日本の老親世代(75 歳以上)に強く訴えたいのは、「仕事と同様、自身の往生際をプロジェクト化すべき」だということです。ただし、老い先の問題が仕事と異なるのは、親の役割は PDCA の P(PLAN)だけであり、D(DO)以下は、こどもたちのうちの一人に託さなければならない。この一点において、老い先プロジェクトは、親子共同プロジェクトなのです。 なぜなら、親がプランしたエンディングまでの基本方針を、いざその時が来て DO しなければならない時点では、老いた親自身が遂行することはむずかしいからです。当然のことです。であるからこそ、親の側がエンディングまでに遭遇するであろう”老いの課題”について、明確なる基本方針を描き、老い先を託すべきわが子と共有しておかなかったらどうなるか。仮に基本方針を共有していたとしても、それを実現するための予算を渡しておかなかったらどうなるか。そういうことなのです。自分の親に「まさか」が起きた時に、親がどうしてほしいのかをあらかじめ知らされていないから、仕事や家庭で忙しい中で右往左往することになるのです。あるいは、親が望んでいたことを実現するために必要な予算が用意されていなかったから苦悩することになるのです。 あらためて、老親世代がエンディングまで過ごし方について明確なる基本方針を策定し、そのための予算をあらかじめ先渡ししておけばこそ、いざ「まさか」が起きた時に、こども側が被るダメージは大幅に減るのです。少なくとも、三ヶ月間の介護休業を取得する必要はないし、ましてや介護離職したり、介護離婚したり、介護殺人などという悪夢を見ることはないでしょう。だからこそ、子を持つ親たちは、遅くとも健康寿命が尽きるまでに、エンディングまでの生き方に係る基本方針を明確に決めて、それを記して、老い先を託すべきわが子とのこころの距離を縮めた上で想いを伝え、頼むべきことを頼み、それを遂行するのに必要な予算を渡しておく…。そんな”賢者の終活”を実践しなければなりません。これこそが、子を持つ親としてのファイナル・ミッション。親のさいごの大仕事です。 私は四半世紀超の長きにわたって、相談援助の国家資格・社会福祉士としての矜持をもって、老親問題に窮している現役世代を具体的に助けてさしあげるとともに、今はまだ老親世代が顕在化していない現役世代に、老い先にそなえていない親にそなえさせるための術を伝え続けてきました。そして、これからも多くのビジネスパーソンを抱える法人各社の福利厚生施策として、『お困りごとコンシェルジュデスク』サービスをお届けしてまいります。 企業の人事部門において、従業員とご家族の介護施策に携われておられるみなさまにおかれましては、是非一度、懇談の機会を賜りますようお願いを申し上げます。

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